プロ野球では大体今ぐらいの時期に新人選手を獲得するためのドラフト会議というものをやるのですが、このドラフト会議に対して「職業選択の自由を侵害してる」とか「独占禁止法に違反している」とかって批判されることがあります。
そのドラフト会議に似た制度を仮想都市計画の上級公務員人事に取り入れたいなぁってのがテーマになるんですが、まぁちょっと長くなると思うので、今回はプロ野球のドラフト制度についての理解を深めるところまでになると思います。
プロ野球の組織図

こいつは今回の内容のプロットになります。
とりあえず左側から順番に見ていきましょう。
日本のプロ野球というのは一般的な認識ではまず一番上にNPBという12球団のプロチームをまとめる組織があって、その下にフランチャイズで地域独占権を与えられた12球団が存在します。
NPBが幕府で12球団が各地域の藩みたいな感じですね。
そして親会社の幹部を務める球団の代表がGMを選んでGMが監督を選び、監督がコーチを選んでコーチが試合に出る選手を選んでいる、っていうのが一般的な認識だと思われます。
権力ってのは一般的には指名権とか任命権のことですから、選ぶ選ばれるの関係ってはっきりと上下関係になるんですね。
だから図の下の人は上の人に頭が上がらないってのが基本的な構図になります。
ストライキという伝家の宝刀
このプロ野球の組織図について「実はNPBの背後に黒幕がいるんじゃないか?」って疑われたのが2004年の球界再編問題の時ですね。
2004年球界再編問題というのは当時赤字球団だった近鉄バファローズをオリックスブルーウェーブに売却して合併することでプロ野球のチーム数が12から11に減る、もしかしたらそこから更に減って1リーグ制になるかもしれない、って騒がれた問題です。
この時「近鉄とかオリックスが吸収合併に向けて動くのは分かるが、NPBが野球チームを減らして野球人気を衰退させる方向に動くのが理解できない、きっとNPBってのは12球団オーナー会議で決まったことに逆らえなくて、そのオーナー会議を影から操ってるのがナベツネだ!」っていう論法でNPBお飾り疑惑が出たんですね。
この球界再編問題に対して選手会は普通の労働組合としてチーム数の減少を止めるようオーナー側に要求するわけですが、それに対してナベツネさんが「たかが選手が」と言い自分達の方が上だと強調してオーナー側が選手会側の要求を拒否しています。
そしてその後選手会側が最終手段としてストライキを決行するわけですが、その時の詳細が↑動画の中で語られています。
その中で興味深いのがスト前の16・17日の交渉とスト後の23日の交渉とでオーナー側の態度が180°変わっていたという証言ですね。
これはつまりストを決行した時点で勝負が決したということを表していると思います。
実際スト前交渉でもオーナー側の要求はスト回避だったわけで、そのためにわりと手段も選ばずで永久追放をちらつかせて脅したりもしていました。
それがスト後は完全に手のひら返しで選手会側のスト前要求を全部飲むほどでした。
何故オーナー側はストライキを回避したかったのか、その辺の謎を解く鍵がドラフト制度にあると筆者は考えました。
次はそこについて見ていきましょう。
ドラフト制度は違法なのか?
最初に少し触れたようにドラフト制度は「職業選択の自由を侵害し」「独占禁止法に違反し」ていると批判されています。
職業選択の自由に関しては説明不要だと思いますが、独占禁止法は何が違反しているかというと、入団交渉をする権利をクジを当てた球団にだけ独占的に与えているという点が違反してるというわけですね。
交渉する権利自体を独占することで契約金や年俸を不当に安く設定することが可能になる、ということで禁止されているわけですから、本当に選手年俸を安くしてしまうと言い訳出来なくなってしまうのでプロ野球選手の年俸は高めになるように設定されています。
いずれにせよドラフト制度は普通にやると法律に違反した状態になってしまうのは間違いありません。
これがどういうことかというと、もし仮に裁判になれば確実に負けるということを意味しています。
そして裁判で負けると、もう同じ方法(ドラフト)で選手を獲得することは出来なくなります。
もしやったらヤベェ奴(反社組織)ってことになってしまうので各球団の親会社からしたら宣伝効果どころの話ではなくなってしまいますからね。
だからかどうか分かりませんが、ドラフト指名で裁判になったという事例を筆者は見たことないし知らないんですよね。
江川事件とか色々闇深そうな事例には事欠きませんが不思議と裁判になった事例は見つけられないので、もし知ってる人がいたら教えてください。
面白い試合をする権利
というわけで普通にやれば法律違反なので、何かしらの工夫をして法律違反ではない状態にする必要があります。
ざっくり言うと、選手自身がドラフト制度を望んでいるからドラフト制度を導入した、っていう形に持っていくわけです。
そのためには選手がドラフト制度を望む理由が必要になります。
それが「面白い試合をやるために戦力を均衡させる必要がある」という理由です。
もしトランプゲームでも金を沢山払ったやつから強いカードを選ぶことが出来る、なんてルールだったらそれはもうただのクソゲーじゃないですか。
選手は戦力均衡した環境で面白い試合をやりたいって言ってるのに、金で戦力差が付いたクソゲーを強要してしまったら逆にそっちの方が「営業の自由」の侵害とかで憲法違反になる、ということでドラフト制度が合法になるって寸法ですね。
選手会という労働組合が組織の長に
それで一応ドラフト制度は合法になるわけですが、あくまで存在が合法になるだけで、現在のNPBのようにドラフト制度で強い選手を独占するという状況までが許されるわけではありません。
このままだと公取委辺りから「ドラフト制度を求める選手と自由競争を求める選手がそれぞれ選べるように二つのプロ野球組織を作りなさい」と要求される羽目になります。
当然そんなことになったら個々の選手達は囚人のジレンマの原則から自由競争の方を選ぶことになるので、選手達と話し合ってドラフト制度を望む方に意思を統一してもらう必要があります。
そこで選手会という労働組合に白羽の矢が立つわけですね。
まず選手会に多数決で意思を統一してもらって少数派(ドラフト制度反対派)のフォローもしてもらう。
そしてNPBを組織したり各球団を経営するフランチャイズ企業を集めたりといったことも選手会主導で行ったことにする事によって、NPBは選手会のものということで選手会が組織の頂点に君臨し最終的な決定権を持つことになる。
ここまでしてようやくドラフト制度で市場を独占する事が出来るようになるのです。
何故選手会の要望が通らないのか
というわけでドラフト制度を採用している以上選手会には絶対服従しないといけないから、ストライキ後すぐにオーナー側が折れたってことになるんですが、流石にこれだけだと「いや全然選手会の言う事聞いてないやろ」ってツッコミが聞こえてきそうです。
まぁあくまで法的に服従していればいいわけですから外から見て全然そんな風に見えなくても問題ないわけですが、実際に「FA取得までの期間を短縮しろ」とか今現在の要望に対しても応えていないわけなので「絶対服従は嘘やろ」と思われるのも当然かなと思います。
それに関しては理由の一つはリアルにコレ↓ですね。
実際FA制度に関しては10~20年毎のスパンで少しずつ進んでいますからね。

二つ目の理由は、江戸時代の商人と武士の関係で考えると分かりやすいと思いますが、いくら身分が上だろうが結局は金持ってる奴には逆らえないってことです。
分かりやすく言うと「選手会の案では金を稼げないから運営出来ない」とでも言っておけば、選手会側は実際に金を稼いで自分たちの給料払ってる人達に反論出来ないので従わざるを得なくなるんですよね。
三つ目の理由は、日本の司法が残念ながら中世レベルだったってのが理由です。
アメリカの方では選手会側がストライキをちらつかせることでより選手側に有利な条件を獲得することに成功しています。
給与面でもそうですが、ロースターといって選手の登録枠を厳しくすることで所謂飼い殺しが出来なくなっている点が大きく違いますね。
日本で出来ない理由は何故かは分かりません。
選手会がビビりなのか、弁護士が無能なのか、裁判所がヤベェのか。
いずれにせよ日本の司法が中世レベルなのが原因なのは間違いないと思います。
あとがき
今回はプロ野球のドラフト制度について見てきました。
次回はこのドラフト制度を仮想都市の上級公務員人事にどうやって組み込んでいくのかを見ていこうと思います。

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